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井上千鶴のことば

 

 

 

数日前の朝、2階の自室から降りようと中庭に目を向けると

茶室の軒先に一羽の鳩がじっと考えるように止まっています。

 

気になりながら音を立てないようにして洗面所へ行きました。

用を足して、また中庭を見ると

まだその位置にじっと止まっています。

 

アシスタントの牧田さんが出勤してきました。

それでもまだじっと定位置です。

 

10分ほどしてバタバタと音を立てて中庭から抜け出そうと飛ぶのですが

四方を高いガラスに囲まれている中庭で

なかなか助走なしに一気に高く飛ぶことができません。

結局ガラス面に二ヶ所大きく羽を広げた跡がついただけで

今度は土の上に降り立ちました。

 

こんな事をくり返していると

どんどん体力を消耗してしまいます。

相談の結果、虫取り網で捕まえて

外へ逃がしてやろうということになりました。

 

ちょっとした大捕り物が始まり

無事、手でふんわりと抱え、広い庭へ逃がしてやりました。

 

この一連の行動が鳩にとってみると

何が何だか分からないことで

一体どうすればいいのかと立ち尽くし

その状況を理解するまで大分時間がかかった様子でしたが

一時間ほど後、鳩のいたところを見てももう居ませんでした。

 

「ほっ」としました。

 

一昨日からの雨風で、紅葉が一斉に葉を落とし

すっかり陽の入る明るい庭になりました。

本格的な冬枯れの季節の到来です。