井上千鶴の言葉
井上千鶴のことば
動植綵絵
盛夏の間中、雨が降らないかなーと思っていたのも、ようやく
一息ついたこの頃、台風接近と秋雨前線の影響で雨模様の日が続きます。
敬老の日と、土、日が重なり三連休です。
京都は美しい庭園で有名な寺院が沢山ありますが、上京区にある
相国寺・承天閣美術館入口の風情は、一味違った美しさです。
朝鮮半島の高麗の石彫と灯籠が随所に配され中低木の紅葉や、もちの木、
くちなし等がその間をつないでいます。足元は杉苔で埋められ、雨水を
たっぷり、吸い込み美しい緑をたたえています。
豪快な石の有様と緑の自然なたたづまいが丁度いい具合に相まって
今風な感覚の庭園を作り上げています。
アプローチを過ぎ美術館の中へ入り、若冲の30服の軸を見ました。
最近描かれたような鮮やかな色彩とエッジの立った筆致は見る者を
引き込む力強さです。顔料の重なりの質感、その効果の美しさ、何とも
これがコロタイプというものなのかと、驚くばかりです。
若冲さんが存命で、これを見られたら、どう言われるのかとつい思って
みたりもしました。中央に掛けられている若冲肉筆の釈迦三尊の軸以外は、
皆、便利堂渾身のコロタイプ製だとの事。大変な技術です。
もちろん、本科(オリジナル)に勝るものはないのですが、それにしても
肉迫するこの圧倒的な存在感は若冲の作品であるが故の事なのでしょうか。
拝観者の中には若冲のオリジナルと思って見られている方も居られるのでは
ないかと思ってみたりもしました。
機会があれば是非、相国寺承天閣美術館へ行ってみてはどうでしょう。
錦秋というには、まだまだ早いですが、京の町中を少し離れ、
ゆったりとした時間を過ごすつもりで行くのも良いでしょう。