井上千鶴の言葉
井上千鶴のことば
竹内栖鳳と京都画壇
私がまだ実家に居た幼い時期、よく、母は京都に住んでいた頃の昔話を、
表現力豊かに話してくれたものでした。
その中に竹内栖鳳という立派な画家の名前も時折出てきました。
小さな時に聞いたその名前が、近代・日本画を語るに不可欠な存在の方で
あったという事が解ったのは、大学を卒業してからの事でした。
昨日、京都市美術館コレクション展「きらめきを伝える、京都・美の系譜」を
観に行きました。ポスタ-・チケットは、重要文化財に指定された竹内栖鳳の
大正二年制作「絵になる最初」でした。
幕末より現代に至るまでの京都(日本)の美術、工芸を代表する作者の名品が
展示されています。中でも、栖鳳は伝統を重んじながら独自の斬新な画風を
築き上げ、その力量の凄さは、他を圧倒するものでした。
そんな栖鳳が居て、多くの弟子や近い方々に影響を及ぼし、京都画壇の厚味を
増していったのでしょう。
今も目に焼きついているのは、二頭の虎を描いた屏風の素晴らしさでした。
日本画の方でありながら、その筆勢の凄さ、表現力の多彩さ、それでいて、
軽妙なセンスの良さは、全く天才としか言いようがありません。
重文に指定された、「絵になる最初」はもちろん、正道として描かれた日本画の
名品である事は確かでしょうが、それ以上に私にとっては、二頭の虎図が、
一生忘れられない作品になりました。猛暑の中でしたが、良い絵を見、感慨深い
思いに浸れた一日でした。
まだまだ来週も猛暑が続くようですが、暑さを忘れる程の何かに巡りあいたいと
近い所でうろうろする夏休みです。