井上千鶴の言葉
井上千鶴のことば
花冷え 五月の陽気が、お彼岸の中日頃には感じられたのも束の間、 今日の寒さは冬に逆戻りです。 毎年の事ながら、桜の開花便りには必ず、 花冷えの日があって、ようやく本格的な春、爛漫となります。 そんな中、休日を見計らいながら道具や食器の 整理をしています。 結婚する以前から好きな骨董品、特に食器やお茶碗に 使える物を求めてきたのが、この年になって、かなりの 量になっています。 日常的に使い易い品、料理や季節によって 使い分ける食器は、大皿、小皿、銘々皿、小鉢、椀、 飯茶碗、汲み出し茶碗、茶托、菓子器、抹茶椀 等々 書き出したら切りがない程です。 考えてみれば、この様な器類の中でも、お客様用等は 今まで何度使った事かと思うと自分の代だけでなく、 娘や孫が使わないと本当に勿体ない事になって しまいます。 昔の家族のあり方は大家族で、一年中、各々の 家の行事に沿って会食があり、お客様のもてなしの 折りには、季節を感じる食器やしつらえを楽しみます。 そんな時、親が何を、どの様に使い盛り付けるのかを 見聞きし、体験する事が、その家の伝統として 受け継がれていったものです。 私は、母のしている事を今も思い出す事があります。 しかしながら、最近では家へお客様を呼ぶ事も 少なくなり、又、娘や孫と一緒に住んでいる方も 珍しくなっています。 家の伝統(大層ですが)や、大切な各々の道具は 今後どのように継がってゆくのでしょうか。 私自身も道具の整理をする度にそんな事を思い ますが、今一時、残された時間を大切に、好きな 道具や器を慈しんで使いたいと願っています。 その前に整理整頓が待っています。 桜を愛でながら、楽しんでしたいと思っています。