神饌
ようやく春らしい日が続くようになってきました。
相変わらずビュアーの机に向かってフィルムを見ています。
2日程前から神饌のフィルム整理にかかっています。
神饌とは字の如く神様が召し上がる食事、お供え物のことです。
神道によらず仏教でもお供え物の型は様々なものがあるようです。
仏教では生臭物は避けて、植物由来のものだけが供えられますが
神道では魚や貝はもちろん、雉やカエル、イノシシなどの動物まで
形をそのままに残してのお供えや貴重なものが供えられます。
中でも種子を使った造形物の供え物の美しさは驚くばかりです。
赤、黄、緑、青にお米粒を染め、元の白米の白と合わせて5色を使って
幾何学文様を描きながら円筒型に造り上げます。
もちろん、現在はピンセットがありますから
まだ時間さえかければ出来そうですが
これが1000年も前から造られていたとは本当に驚きです。
また、麦の穂付きの一本一本を並べ揃え立て、その上に真っ赤なほうずきを飾ったり
柚子の実を円筒状に並べて、その頭にケイトウの花を飾ったり(人の首のイメージ)とか。
美しいのか、グロテスクなのか
よくよく考えてみると、何か生々しいものがそこには隠されているようなものまで
長い歴史を窺うことが出来るのです。
そんなこんなで考えながら、30年ほど前にインドネシアに行った折に見た光景を思い出していました。
日本の昔を思わせる小さな段々畑が続く中を
高さ70cmほどもある供え物を頭の上に乗せて片手を添えて
多くの女性が三三五五に畦道を歩いてお祭りに来るのを見たことがありました。
寺院の近くの小川で沐浴をして、最後にお寺へ入っていくのです。
洋の東西を問わず、信仰にかける人々の思いの熱さが
文化の伝承に欠かせないことだと思う1シーンでした。