井上千鶴の言葉

井上千鶴のことば

 

 

 

散り際

 

朝夕、めっきり冷え込むようになり

一気に楓の葉が色づき始め

庭のほとんどのもみじが赤に染まり

その赤も、黄色味を帯びたものから深紅まで

いろいろな彩りの美しさは今ひとときのことだと思っていると

今日は久しぶりの雨でした。

 

雨に濡れた葉はより鮮やかですが

同時に雨に打たれて葉を落とし

庭のそこここが赤一面に覆われます。

3日もするとふわふわの赤の絨緞が敷き詰められるようになります。

 

植物の中でも、もみじは成長もそれなりに早く

10年もすると枝も張り、幹も一握りでは無理なほどになる姿は

ほぼ私たち人間の成長と同じくらいに思われます。

 

秋から冬にかけてすっかり葉を落とした枝をよくよく見ると

新芽の準備をしっかりして、寒い冬の間はじっと耐え

4月頃になると新芽の先が少しずつ大きくなり

えんじ色の外皮を押しのけて葉が出てきます。

すぐに花も咲き出し、新緑の頃には小さな赤い花にみずみずしい緑の葉が

なんとも若々しい息吹きを感じさせてくれます。

それが夏になり、緑が濃くなる頃には花が実になり落ちて

小さな子供たちが一面、子葉を出します。

そして秋には、夏の間蓄えたエネルギーを一気に出すかのように紅葉を始め

やがて寒さと共に散り終えます。

 

1年が過ぎ、年月を重ね、同じことの繰り返しが少しずつ成長をもたらしていきます。

 

 

私たち人間は毎日毎日めまぐるしく立ち働いているようですが

大局神様から見ると、多分もみじとそんなに変わるところはないのかもしれません。

ただ人間は、人を傷つけたり、動物や環境にまで仇する「やっかい」な存在ということは悲しいことだと思います。

せめて人に迷惑をかけず、人を楽しませる楓のような人生でありたいと願ってやみません。

 

 

 

 




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